脱めんどくさい医療

今の医療の問題点を医師の視点でわかりやすく解説します。

風邪を治しに病院に行く?

今回のまとめ

  • 風邪はウイルスがのどに感染したもの
  • インフルエンザ以外の風邪のウイルスに対する薬はない。
  • 健康な人は「薬局でロキソニンを飲んで寝る」以上の治療は病院に来てもない。

 

まずは身近なテーマとして風邪を引いた時に病院で僕らが何をしているかということについてお話しします。

 

風邪は専門用語ではないので、色々な使われかたをすると思いますが、今回は「のどにウイルスが感染する病気」を風邪とします。鼻水またはのどが痛い(咽頭痛)、急に熱が出てきたという場合はほとんどが該当すると思ってください。

胃腸にウイルスが感染すると「お腹の風邪」という言い方をするかもしれませんが、これは腸炎ということにして後日お話しします。

 

普通の内科の外来や当直などをしていると一番多いのが風邪で、正直同じような説明を延々としているのでやってるこっちも飽きてくる病気です。

 

若い人(医師的には10代〜50代くらいは若い)が「昨日から熱が出て、ノドが痛くて鼻水と咳も出てきて、痰も出て、関節が痛くて‥」と仰られると、「はいはい、風邪ですね。そのうち勝手に治りますよ」とまあほとんどの場合は話しを聞きながらそう思ってます。(ノドの診察をして扁桃炎かどうかは確認します。扁桃炎は細菌の感染で治療が変わります。)

 

風邪はほとんどがウイルスの感染です感染症というのはほとんどが細菌(bacteria)かウイルス(virus)ですが、どっちが原因かによって対応は変わってきて、細菌だと抗生物質(もしくは抗菌薬)というものが良く効いて、細菌をやっつけることができます。

しかしウイルスをやっつける薬はほとんどありません。のどに感染するウイルスではインフルエンザくらいしか薬はないのです。

ではどうやって治っていくのかというと、風邪は自分の免疫力で勝手に治ってます

ということは風邪の薬はウイルスをやっつける薬ではありません。ただ単につらい症状をちょっと軽くしているだけの薬です。

 

ということで風邪の薬は対症療法と言って症状を軽くする薬を出します。

熱やのどの痛み、関節痛→解熱鎮痛薬(ロキソニンなど) 

咳→咳止め(メジコン、リン酸コデイン、カフコデなど)

鼻水→抗ヒスタミン薬(PL顆粒、アレグラ、アレロックなど)

痰→痰切り(ムコソルバンムコダインなど)

 

これらの薬を症状を聞いて機械的に処方しているだけなのですPL顆粒は総合感冒薬なのでこれだけでもいいかもしれません。正直薬局で買った薬でもそんなに変わらないでしょう。病院に行くメリットは医療保険で安く買えることくらいでしょうか。デメリットは病院まで行くのがしんどい、待ち時間が長い、休日だと医師も忙しいので対応も感じが悪いなどでしょうか?薬の費用が安いといってもたまに診てもらうような病院だと初診料というのがかかるので、多分割高になります。休日に病院の救急にいくともっとかかります。以前研修医の時に風邪を引いたので、勤めていた病院の夜の救急で知り合いの先生に処方と検査(採血)をしてもらったら全部で1万円近くしました。個人的な印象としては勝手に治る病気ごときにとてもこれほどの価値があるようには思えません

 

また風邪の薬はよく出しますが、出しっぱなしでその後患者さんがどうなったかは僕らはよく知りません。なので、どの薬がどの人に効果があったかなどを学ぶ機会(フィードバック)がなく、風邪の診療は僕らにとって勉強にならない、成長しないこともあっってやりがいがないような気がします。やっぱり後日あの薬でよくなりました、ありがとうございますといった言葉を頂けると本当に嬉しいのですが、風邪は勝手に治っちゃうのでそういうことはほとんどありません。

 

なので僕は何が効果があるかは自分が風邪を引いた時に色んな薬を試して、効果がありそうなのを患者さんに処方してます。僕らは職業柄風邪をもらいやすいですし、同僚や患者さんに迷惑をかけないためにも体調管理には必死です。とはいっても風邪はひきますし、風邪を引いても何とか早く直さねばということで色々試みてます。ちなみに僕は色々試すのが好きで、暇な時に薬の本を読んで、次これ試してみよう!って感じで色々試しました。結果、個人的な意見ですが(多分だいたいの医師の意見でもあると思いますが)ロキソニンが一番楽になりますし、効きます。

あとはPL顆粒は効き目は弱めかもしれませんが、鼻水は止まりますし、抗ヒスタミン薬の作用で眠くなります。仕事とか休めて家でじっくり寝ていられる状況では、しっかり休むことが一番早く治る方法だと思いますし、PLの眠気を利用してしっかり休むために飲むのもいいんじゃないかと考えてます。

葛根湯や麻黄湯といった漢方薬は僕にはロキソニンほど効いている感じがしないので、個人的には希望する方以外には処方してません。僕が漢方薬に精通していないせいかもしれませんので、漢方の得意な先生だと意見が違うと思いますので、その辺はご了承ください。

なので僕の処方は大体

ロキソニン 朝、昼、夕食後に1錠づつ

タケプロンOD 1錠 朝食後→ロキソニン胃潰瘍予防に一応出してます。

 

もしくは

PL顆粒 朝、昼、夕食後 1包ずつ

ロキソニン1錠 発熱、関節痛が強いときに追加で使用、1日2回まで

といった感じです。

抗生剤やイソジンうがいなどとにかく色々処方する先生もおられると思いますが、個人的には薬はシンプルに効果の高いものを出す方が色々な意味で良いと思います。そう考える理由については後日解説しようと思います。

 

よく明日仕事だからなんとか早く治して欲しいとか、点滴で早く治して欲しいとか無茶なことを言われることも多々ありますが、僕が風邪を早く治せるわけありません。治しているのはあくまで自分です。ちなみに点滴は血管に直接薬や水分などを入れる行為で、血管に針を刺して水の入った袋を吊っているやつです。もちろん風邪のウイルスをやっつける薬は点滴でもありません。水分補給は点滴でできますが、そんなことしなくても水を飲めばいいと思います(発熱などで多少体の水分が減ってるので点滴で少し楽にはなります)。

 

結論ですが、風邪を引いたときは普通の人は薬局で薬(ロキソニン)を買って寝とけばいいです。病院に行ってもしんどくてお金がかかって嫌な思いをするだけです。

平日で家の近くですぐ診てもらえるクリニックなどがあればそこで診てもらってもいいかもしれませんが、基本的にはそれ以外はあまりお勧めしません。

 

こんなことを書くと「そんなこと言ったら医者はいらんのか!」と怒られそうな気もしますが、状況によってはもちろん行った方が良い場合もあるので次回はこういう場合は病院に行こうといったことを書こうと思います。とにかく、風邪で病院に行くというのはこの程度のことだと認識していただければ幸いです。

 

 

 

 

 

これから

今日は。今回から初めてブログを書こうと思います。

テーマは主に医療のことです。私は内科の医師で専門はリウマチ、膠原病という病気です。あまり知らない人も多いと思いますが、免疫という身体を細菌やウイルスといった外敵から守る仕組みがおかしくなって起こる病気と考えてください。

 

ただし僕がブログで書こうと思っているのはこのややこしい病気のことではありません。もっと一般的な病気のことや、世の中で問題となっていることを広く、一人のドクターの視点からわかりやすく説明していきたいと考えています。

 

今は健康や医療に関わる知識や情報も本当に多くて、正直、患者さんもぼくらも大変な時代です。専門外のことなど知らないこともいっぱいあります。

 

しかし知識が多くなったからといって本当によい医療ができているか、受けられているかははなはだ疑問です、というか僕からすると逆にできていないと断言します。もちろん僕も自分的に十分なことができているとはもちろん思ってません。

 

ただ、すこしずつ一歩ずつでも良くしていきたい!そのためには患者さんや一般の方にも僕らと同じ目線で考えて、悩んで欲しいのです。

 

このブログは最先端の知識を紹介するものではありませんし、私見も多く含まれているかもしれませんが、すこしでも皆さんが納得できるように努力するつもりです。

何より医師の医療に対する感覚のようなものを伝えていきたいと思います。